指は鍛えなくても大丈夫。タッチの支えがあればワンランク上の演奏になる。

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弾いてると音の粒が揃わなかったり浮ついた音になったりして、いまいち思ったように弾けないのよね。もっと指を強くしないといけないのかな。

タッチがしっくりこないのは指が弱いから。だからもっと強くするためにハノンなどの指練習をたくさんしないといけない、と思いがちだ。昔のわたしもそう思っていた。

しかし、今のわたしは指を強化するためだけの練習はいらないと思っている。なぜなら鍵盤をタッチするときの支えがあれば演奏中の不安定さは十分解消されるからだ。

タッチの支えとは、意図した音色を出そうとして鍵盤にタッチしたときの指を支えること、である。この支えがあれば、よい音色がするし、安定した弾き心地でいられる

なるほど。でも、タッチを支えるってどんな感覚なのかな。

タッチを支えるとは、簡単に言うと打鍵した指がグラつかないように支えるということだ。

今回はタッチを支えているときの具体的な感覚について書いてみたので、参考になればと思う。

  • 指を鍛えなくても弾ける
  • タッチは意識的に支える
  • まとめ

なお、ハノンなどの指練習をする場合は、指を鍛えるというよりタッチの支えを意識しながら弾くことをおすすめしたい。

指を鍛えなくても弾ける

ピアノを弾くためには指を強くしないといけないと思うだろうが、頑丈な指が必要なわけではない。

ピアノ演奏では重厚感のある大きな音から消え入りそうな弱音まで、また粒のそろった音や安定感のあるフレージングでもって奏でられなければならないが、それには指先にかかった圧力(強弱)を支えることが必要となる。

強い音には強い支え、弱い音にはそれに見合った力で支える。そのような支えがあれば意図した音色で鳴ってくれる。

これをタッチを支えるという。具体的に言うと指先にかかる強弱に合わせて手指がグラつかないようにすることである。

グラつかないように支えるためには、手指においてちょうどバランスの取れる点を見つけることだ。

自分の指で観察してみると、指の第1関節と第3関節がそれにあたることがわかるだろう。この部分を使ってグラつかないようにバランスをとってタッチを支えれば、良い音と弾き心地の良さが得られる。やみくもに指に力を入れてしまうとバランスが感じられないので注意しよう。

バランスをとるグラつかない=支えられている状態

結論としては、指自体が強くないとしっかりタッチできないということではない。支えていないから音がしっかりしないということだ。

もしハノンなどのような指の練習をするなら、単に指をほぐしたり指を強くする目的で弾くよりもタッチを支えながら弾いているという意識を持つ方がよほど意味のある練習になる。またそのような練習の過程で自然に指も鍛えられていくので、とりたてて指自体を強く鍛える必要はないと思っている。

 

タッチは意識的に支える

ご存知の通り、タッチとは打鍵したときの指先に感じる弾き心地のことを指す。

感覚というものは人によって違いがあるだろうが、タッチが支えられている場合は弾き心地の良さを感じるはずだ。具体的にはどういう感覚なのか、わたしの考えと感覚をまとめてみた。

タッチを支えるとは

タッチを支えるとは、鳴らす音を支えるとも言えるだろう。要するに良い音を出すということだ。

声楽において発声する時、腹筋で支えなければ音程が崩れてしまう。ピアノでは音程が崩れることはないが、タッチを支えないと立った音(芯のある音)にならない。

例えば、文章をかしこまって読み上げるとき、いい声を出そうとして口周りや喉、腹筋、背中などの筋肉がシャキッとする感覚になると思うが、ピアノ演奏におけるタッチもそのような感覚だ。良い音を出そうとして体勢をとる。

しかし、かしこまってとか、本番のつもりでとか、あるいは上手に弾こうという精神的なリードだけで弾いても苦手な箇所が克服できたわけではない。

確実な効果を得るには、やはり技術的にタッチを支えられなければならない。

そのためにはタッチを支える意識を持つことが大きなポイントになる。

一曲の中に膨大な量の音があるけれど、やっぱり弱くなったりする指に対して意識すればいいのかしら?

NO!タッチの支えは曲の中のすべての音を出す際に意識されなければならない。なぜなら、タッチの支えは“音の質”に関わってくるから。

一音一音すべてのタッチに支えが必要なのね。

ピアノ演奏は心身を総合的に使って表現するからこれさえできればカンペキというわけではないけれど、タッチの良し悪しはかなり演奏の印象を左右するわね。

 

タッチを支える感覚を得るための具体的な方法

タッチを支えている感覚は人それぞれによるだろうが、ここではわたしの感覚を言語化してみる。

  • タッチを支える感覚とは
  • 支える=安定感を求める練習
  • フレーズをタッチの支え(安定感)を確認しながら弾く
  • 鳴らしたい音をイメージして指先に伝え、そのタッチを支える

タッチを支える感覚とは

わたしにとってタッチを支えていると確信できる感覚は、指先のタッチで手を安定させられている感覚があるときである。

打鍵した指先タッチ(第1関節)で重心をとりバランスをとるときに第3関節において支えが起きて手が安定するその状態では手指がグラつくことはないし、手の形は意識しなくても自然と理想的なポジションがとれている。

このようなタッチを支える原理は別の指に重心を移しても、また運指によって様々な手の形になっても、どんな音量や動きであっても変わることがない。

指から指へ重心を移動させるたびに、指先タッチで重心をとり、その状態で手がバランスを崩すことなく安定していることを確認する。わたしにとってタッチの支えを意識した演奏はこの連続である。

支える=安定感を求める練習

鍵盤を押し下げたとき、その指先タッチ(第1関節)に重みが掛かり(=重心)安定するのを確認しよう。この安定するときに第3関節で手指を支えている。

  1. まず右手の1指でこの安定感を得られたら、次は2指へとその重心を移動させる。
  2. 2指の指先タッチに重みが掛かり(=重心)安定するのを確認しよう。
  3. 同様に、3,4,5指も指先タッチで重心をとり、そこにバランスを崩すことなく手が安定している感覚を確認する。
  4. 1~5指のどの指に重心を移動させても、その指先タッチで手がバランスを崩さず安定している感覚を確認する。
  5. 左手も同様にする。

フレーズをタッチの支え(安定感)を確認しながら弾く

実際の曲はここにフレーズとしての音量やリズムの変化が加わる。

その場合指先に伝わる圧力(強弱やリズム)に対応した支えが必要となる。それは、どんな強弱やリズムであっても第1関節と第3関節を使ってバランスをとって手を支えるということだ。

まずはゆっくり弾いて、指先タッチにおいて強弱やリズムがあっても安定感が持続する一点を探していこう。安定感を感じられれば重心がとれている。

タッチを支えるとは、そのタッチの一点で重心をとり手を安定させるということ。

鳴らしたい音をイメージして指先に伝え、そのタッチを支える

鳴らしたい音とは単に強弱だけで表されるものではなくて、そこには様々なニュアンスが含まれる。それらを実現するためには、その様々なニュアンスに対応した指先タッチの支えが必要になる。

音楽的表現をもって弾く場合はタッチの支えに注意深くないといけない。音のニュアンスを壊さないように敏感に支えよう。

とくに繊細な音楽的表現では、感じとったニュアンスを壊さないように注意深くタッチを支えること。

 

タッチを習得するためには感覚に正直であること

鍵盤上で指がしっくりくるように練習することは、自覚するしないに関係なくタッチの練習をしていることになる。タッチが上手くいけば納得のいく音が出ているはずだ。

しかし、“しっくり”という感覚だけを頼りにせず、上記で説明したタッチの支えの仕組みを忘れないことが大事だ。そうすれば、タッチが崩れたときにいつでも原点に立ち返ることができる。

タッチを支えられているかどうかは自分にしかわからないことだ。一音一音打鍵のたびにタッチおよび手に安定感があるかどうか、感覚に対して正直であることが速く習得できるポイントだ。

ところで、演奏中にタッチが浮ついてしまうことがよくあるのなら、演奏する上で重要な脱力と重心について理解を深めておくことをおすすめする。

演奏中にタッチが浮ついてしまう原因は、体が力んで指先に重心を下ろせないことにあるからだ。指先で重心をとることが不完全であればタッチを支えることも不完全だ。ミスタッチも多くなるだろう。

重心の取り方については下記の記事を参照してもらいたい。

レッスンでは教わらない⁉「重心と脱力の正しい理解」でピアノがもっと弾きやすくなる!
ピアノでは二本の足の裏、イスと接触しているお尻、鍵盤と接触している指先でバランスをとっている。 つまり、床、イス、鍵盤に接触している面を支点として、そこにかかる重心が、からだが動くたびに安定ポイントを求めて常に移動しているのだ。これが上手く機能していないと、ある箇所では弾きにくいということが起こってしまう。
ピアノを弾くならボディマッピングしよう!知るだけで肩、腕、手首の動きがスムーズになる
人は認識できていない体の部分は使うことがない。ボディマッピングによって体の骨格構造や動き方がわかると、今までの動き方と比べ、格段によいパフォーマンスになる。こんな作りになっているからこんな風に動くんだ、と理解することでそのように体を使うことを自分に許可できるようになる。

重心と脱力について正しく理解できれば指先に重心をもってくることも簡単なのでタッチを支える感覚はすぐにつかめるはずだ。

タッチの支えがあると鍵盤へのはまりも良く、何より手の感覚として安定感がある。その結果、強弱もフレージングもスムーズにこなせる。

この感覚を“モノ”にするまで、感覚に対して正直になって繰り返し練習しよう。

まとめ

タッチを支える感覚は習得できれば無意識の内にやってのける類のものではなく、ピアノを弾くときはいつでも意識していなければならない感覚である。

この感覚をすべての指、音に対して自然に意識できるようになれば、いつでも生き生きした芯のある音として響かすことができる。つまりワンランク上の演奏になる。

  • 明瞭な演奏をするためには、指自体を強く鍛えなくても指先にかかる重さ(圧力)を支えられれば、つまりタッチを支えて弾けば十分可能である。
  • タッチを支えて弾けば芯のある音になる。なのでタッチの支えは曲の中のすべての音を出す際に意識されなければならない。
  • タッチを支えるとは、指先で重心をとり、その上にバランスをとって手を安定させられる感覚である。
  • この原理は別の指に重心を移しても、また運指によって様々な手の形になっても、どんな音量や動きであっても変わることがない。ひたすら指先タッチにおいて安定感を求める。
  • とくに繊細な音楽的表現では、感じとったニュアンスを壊さないように注意深くタッチを支えること。
  • 指先タッチで手を安定させられているかという感覚に正直になって練習すること。

 

最後までお読みいただきありがとうございました♪

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