前回の記事で第3関節を意識して弾くことがテクニックの向上につながることを書いたが、第3関節を意識して弾いていると明らかに今までとは違う感覚へと変化し、そこからより弾きやすい奏法の原理に気づくことができた。
キーポイントは見えない指。ここに対する意識が、指先中心に弾いていたところから手のひら全体を使って弾いている感覚へと変えていった。この感覚は、今のわたしにとってなくてはならないものになっている。
そこで今回は、第3関節から導かれた「手のひらで弾く」感覚についてまとめてみた。
- 手のひらで弾く感覚とは
- 弾きやすさの秘密 ~手の中での役割分担~
- 手のひらで弾く3つのメリット
- まとめ
少しでもしっくりくる弾き方がしたいと思って練習を続けていると、自ずと弾き方が進化、または変化していく。それはアスリートがフォームを改良するようなもので、よりよい弾き方を求める以上それは起こり続ける。これを前提として、記事の内容が一つのプロセスを書いたものであることをご理解いただけるとありがたい。
手のひらで弾く感覚とは
手のひらで弾く感覚とは、文字通り指よりも手のひら側をメインとして感じる感覚だ。
例えばボールを胸の前で持つとき、指先で持つ場合と手のひらで包むように持つ場合を考えてみよう。圧倒的に手のひらで持つ方が安定するし安心感がある。
ピアノを弾く場合も、手のひらを主体にするとこの圧倒的な安定と安心感を得られるのだ。
このような感覚を掴んで弾くと、もうそれを手放したくはないと思うはずだ。
実際私は、「あ、これが正解かも。」と思った。
見えない指がキーポイント
様々な曲を第3関節から弾いていると、関節部分だけでなく、より手首に近い中手骨に自然に意識が向くようになった。(その方が安定するからだろう。)
中手骨は指の付け根であるCMC関節と支えの中核であるMCP関節につながっている。
中手骨はすべて手の中に納まっている。
手のひらのほとんどが中手骨で占められているのよ。
見えない指って中手骨のことなのね!
だから中手骨を意識すると手のひらで弾いているかのような感覚なのだ。
厳密にいうと、手のひらに納まって見えてはいないが、中手骨を1本1本指として動かして弾いている感覚だ。
弾きやすさの秘密 ~手の中での役割分担~
手のひらで弾く感覚をもつと、はっきり言って弾きやすい。それは安定感があるからだ。
手のひらで弾くとは、第3関節から中手骨までを主体として弾くこと。そこを拠り所として弾くということだ。
つまりそれは、基本的な手の重心が中手骨側にあるということだ。だから手のバランスがとりやすい。
この感覚をもって弾いていると、とても大きな気づきがあった。
それは、演奏する手を骨格として感じとることで分かったのだが、打鍵において指先と中手骨側とで役割分担がされているということだ。
この役割をはっきりさせて弾くことが弾きやすさの秘密なのだ。
一輪車から二輪車へ
手のひらで弾く感覚を分析してみると、
- 中手骨側に重心と起点がある
- 指先は鍵盤の場所を捉えて打鍵する
ということがわかる。これはそのまま役割として機能している。
以下が、この役割で弾くときの要点だ。
- 中手骨側に重心があることで、指先は重さ(音色)のコントロールから解放されるので、打鍵する鍵盤を捉えるだけでいい。
- 音の強弱や速さなど、動きやパワー、表現に関することは中手骨側に任せておけばいい。
この弾き方が圧倒的にラクで弾き心地がいい。
指先の負担がかなり減って弾きやすいわ!
わかりやすく自転車で例えてみると、この弾き方がいかに合理的かわかると思う。
- 一輪車は一つの車輪で方向性と動力を担っている。(指先中心の弾き方)
- 二輪車はハンドルで方向性を決め、ペダルをこいで動力を起こす。(手のひらで弾く)
普通に出かけるならバランスをとるのが難しい一輪車ではなく、安定感のある二輪車を選ぶだろう。二輪車はハンドルで行きたい方向を選び、動きは足に任せるだけでいいのだから。
これと同じように、指先は鍵盤を捉えるだけ、動きやパワーは中手骨側からというように役割を分担させて弾けばラクに安定して弾けるのだ!
手のひらで弾く3つのメリット
この感覚で弾くことのメリットを具体的にあげていこう。
- 手のポジションがとりやすい
- スケールの大きな演奏になる
- 音色の粗さがとれる
手のポジションがとりやすい
中手骨側を意識するとき、手のポジションに安定感が得られる。
それは第3関節から指の付け根部分(CMC関節)までを意識するので、基本的に重心を手首寄りに感じられるからだ。
演奏中指は動いているが、中手骨側を拠り所とした弾き方になるので、どういう動きをしていてもそこへ落ち着き、手のバランスがとりやすい。
スケールの大きな演奏になる
中手骨全体を使って弾く感覚を持つと、第3関節(MCP関節)のみを意識するより可動域が広がってスケールの大きな演奏ができる。
特に大きな音をだすときに今までとの違いを感じられる。
例えば、短い釣り竿より長い釣り竿のほうが広範囲に釣り糸をとばせるように、中手骨から弾くと指が長くなってダイナミックに弾けるのね。
音色の粗さがとれる
手のひらで弾くとは、イメージした音楽を指先ではなく第3関節および中手骨に対して働きかけることになる。その結果、指先は作用点として打鍵することになる。つまり指先で音色をコントロールしなくなるのだ。
イメージした音楽を指先ではなく第3関節および中手骨に対して働きかけることによって、そこからのエネルギーが指先に到達するときは、音色の核心部分だけが拾われて粗雑な音色にならない。
これはかなり重要なことだ。なぜなら、この打鍵方法では、どんな場合でも奏でられた音色がある程度満足のいくレベルであるという確信をもって弾けるということだから。
中手骨側から弾くと、いつでもある程度の音色は確保されるってことね。
直接指先で音色を作り出すプレッシャーからも解放されて、一石二鳥ね!
まとめ
ここまで説明してきたように、第3関節を意識することで得られた手のひらで弾く感覚はわたしにとってとても弾きやすい奏法となって定着している。
手のひらには見えない指が埋まっていて、その指から動かすことによって手のひらで弾いている感覚になる。これは手のひらに埋まっている指が主体となって弾いているので、基本的に重心が手首側にある。その結果、指先への負担が減って安定してラクに弾ける方法だ。
それまでは、指先が主体となって音色や強弱のコントロールをがんばっていたのだが、そこから解放されて、指先はただ鍵盤を捉えることに専念すればいいのだ。
これはわたしにとっては画期的な気づきだったのだが本当のところはどうなのだろう。つまりこの奏法は”ある程度弾けるならスタンダードなこと”なのか、あるいは”知る人ぞ知る的なこと”なのか。
弾き方における体の感覚的なことは、わたしの環境では話題になる機会がほとんどないので、他の人が同じような感覚を持って弾いているのかがわからない。
けれど、わたしの長い練習期間の中で、今現在、この感覚がわたしにとってベストであることは間違いない。と同時に、今後も弾き方が変わっていく可能性があることを付け加えておく。
- 手のひらで弾く感覚・・・ボールを手のひらで包み持つような安定感がある。それは、第3関節から中手骨までを主体として弾くことによって得られる。
- 手における役割分担・・・中手骨側に重心と動きの起点を受け持つ。それにより指先は音色のコントロールから解放されて打鍵する鍵盤を捉えるだけでよくなる。この奏法は圧倒的にラクで弾き心地がいい。
- 手のひらで弾く感覚がもたらす3つのメリット
①手のポジショニングがとりやすい
②スケールの大きな演奏になる
③音色の粗さがとれる
最後までお読みいただき、ありがとうございます♪
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